耳の後ろから電気ケーブルを出すタイプの「補助人工心臓」

 変な時間帯に覚醒してしまったので、朝から少しブログを更新してみます。補助人工心臓はポンプを動かすための動力として「電気」が必要となります。ポンプへ電気を共有するための電線(ドライブライン)は腹部より貫通して体外の電源と繋がっています。

朗報?

 当ホームページのJarvik2000へ記載している内容ですが、日本でもドライブラインを耳の後ろ辺りから通す手術が行われるそうです。

引用元:ニュートン 2014年11月号より


新タイプの人工心臓治療へ耳に電気線

耳に電気線、大阪大チーム

 重い糖尿病で心臓移植を受けられない心不全患者に、耳の後ろから電気ケーブルを出すタイプの「補助人工心臓」を埋め込む治療を、国内で初めて今月にも実施すると、大阪大の澤芳樹教授(心臓血管外科)のチームが9日、発表した。

 

 補助人工心臓は小型の血流ポンプを心臓に装着し、耳の後ろから出したケーブルを通して体外の装置から電気を送ってポンプを動かすなどして、心臓の働きを助ける。

 

 ケーブルを腹部から出す従来のものより感染症のリスクが低く、風呂やプールに入りやすくなるなど生活の質も向上するという。

新しいタイプの「補助人工心臓」について説明する、大阪大チームの堂前圭太郎医師。耳の後ろから出たケーブルを体外の装置(左手のもの)に接続し、心臓に装着した血流ポンプを動かす=9日午後、大阪市


 

記事引用元:一般社団法人共同通信社「新タイプの人工心臓治療へ」より

https://this.kiji.is/212522496495699447?c=39546741839462401


大雑把な説明

 補助人工心臓についてはそれなりに情報収集を続けており、Jarvik2000も同様です。今回のニュースで説明している補助人工心臓は決して新しいものではなくJravik2000のことだと思います。(写真からもそのように思います。)
 新しい機種ではなく、新しい術式というのが正しい言い方でしょうか?そもそもアメリカなどでは実施されている内容です。渡米されているコロンビア大学医学部 外科学教授 中 好文先生のインタビュー記事などでも詳しく書かれています。その他にも色々と調べたことを踏まえて私なりに説明してみます。

※あくまで私が書いていることなので、正しい情報とも限りません。その点をご了承ください。

手術時間の違い

 そもそも人間の体には血液ポンプを入れるような隙間はありません。同様に電気を供給するドライブラインを通すための配管や貫通部はありません。よって、補助人工心臓を装着するには血液ポンプが入れるための隙間(ポケット)を作成し、ドライブラインを通すための皮下トンネルを作成します。そして、ドライブラインが体外へ貫通している部分は腹部となります。これは私を含め、国内で植込み型補助人工心臓を入れられている方に共通して言えることです。

ドライブラインを耳から通す場合、腹部よりへ通すより距離も長くなります。ついては腹部と比較して手術時間は長くなるそうです。

消毒不要?

 私が初めてこの情報を知ったとき、「消毒は自分でできるのか?それとも誰かに手伝ってもらうのか?」という疑問が浮かんできました。中教授はインタビュー内で下記のように語っていました。

 

 生活の質でいえば、電源ケーブルの出口が耳のうしろにあるジャービック2000は優れていると言えるでしょうね。頭部は細菌が感染しにくいのです。手術は大変なのですが、手術後に傷が治ったら、その後はガーゼ交換なども不要です。シャワーも大丈夫で、皆さん普通に頭も洗っています。

 

これは私にとっては大変嬉しい。消毒の手間が不要ということもありますが、それ以上にお風呂へ入れるからです。腹部からドライブラインが貫通している場合、お風呂に浸かったときに感染を起こしてしまうため禁止されています。そのような理由によりシャワーのみです。これはお風呂好きの人にとっては地味に辛い。冬場なんか凄く寒いし・・・

なぜ感染しにくいのか?

 情報元は忘れましたが、渡米されている心臓外科医のインタビュー記事で以下のような内容があったと記憶しております。そもそも頭部は血流が豊富なので、菌が付着しても一定の場所にとどまらず増殖しにくいというような事が書かれていました。


日本とアメリカでは事情が違う

 アメリカでは日本と比較して大幅に移植機会が多いです。(過去記事「移植医療の厳しさ、素晴らしさ」を参照)

ついては、移植のために補助人工心臓を利用するケース事態が少ないそうです。そもそも移植機会が多いので、そこまで重症に陥る前に移植へ辿りつけやすい状況があるということも一つの要因かもしれません。

 

 過去にとある補助人工心臓の文献をいただきました。そこでは補助人工心臓装着者本人達が生活についてディスカッションした結果が載っていました。それを見て大変驚きました。

補助人工装着者の内訳

 補助人工心臓を装着した方の内訳を見ると、そもそもBTT(bridge to transplan)利用の方が少ない。これは対象者が少ないのではなく、先に述べたような移植のための利用が少ないアメリカの実情を表しているのだと思います。

BTT(bridge to transplan)は移植までのつなぎとして補助人工心臓を利用すること

 

 ついてはDT(destination therapy) 利用の方が圧倒的に多いのです。その裏づけとして、装着している方の年齢層が高いということを裏付ける数値も載っていました。なお、日本では補助人工心臓のDT利用は保険認可されておりません。現在、学会等で色々と協議が進んでいるようですが・・・

DT(destination therapy)は移植を目的としない利用すること(永久使用と同じような意味?)

理にかなう

 補助人工心臓装着者の多くがDT利用、年齢層が高いという状況から考えるとJarvik2000において耳の後ろからドライブラインを出すことは大変利に叶っていると思いました。これは現在の日本においても「移植までの長い年月を乗り切るため」という目的を遂行するために「耳の後ろからドライブラインを出す」ことで少しでもリスクを減らすことは利に中っているように思います。

 

 ただし、DT利用についてはそうは思いません。アメリカと日本では文化や保険制度を含めた医療環境の違いがあるので、DT利用を保険認可するのは大変困難な状況だと想像しています。何せよ、日本においては移植医療を普及させるといことが急ぎ改善しなければならない課題だと感じております。


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コメント: 2
  • #1

    医療者A (金曜日, 24 3月 2017 21:50)

    最新のトピックで、すごくわかりやすいブログ記事ですね。

    「移植までの長い年月を乗り切るため」という目的を遂行するために「耳の後ろからドライブラインを出す」、
    というのは、理にかなっているようで、実はそうではありません。
    というのも、心臓移植後は免疫抑制をかけますので、VADやペースメーカなど、いらなくなった人工物はできるだけ取り除くからです。体に残っていると、細菌や真菌がくっついて、ひどい感染症になってしまうからですね。こちらで紹介されている耳の後ろからドライブラインを出すタイプのJarvik2000は、ドライブラインを体外に出す部分に、とても固い部品を骨に穴を開けて取り付けますので、心臓移植と同時にデバイス一式をきれいに取り除くのは困難なのです。ですので、DT用の術式、といういうことに今のところはなっています。

    また、VADを取り付ける際にポンプポケットをつくることがありますが、これは機種により、例えばJarvik2000やHVADはポンプポケットを作る必要がありません。Jarvik2000はポンプそのものを左室に押し込む形になります。ですので、実はJarvik2000は胸骨を大きく切り開かなくても、左側からのアプローチで低侵襲に心臓を止めずに取り付けることができます。

    日本では補助人工心臓のDT利用は保険認可されていない、のはそうなのですが、治験はすでに始まっていて、DTでVADを植え込んだ患者さんも日常生活を送っています。近々保険適応になるでしょう。
    また、60歳近くで移植登録をして植込み型を入れる患者さんの場合、今のルールですと移植の順番が回ってくる可能性はとても低いので、実質的にはDT利用となります。このような実質的にはDT利用のVAD患者さんは多数いらっしゃいます。

  • #2

    プチ(管理人) (土曜日, 25 3月 2017 16:04)

    医療者Aさん

    耳の後ろからドライブラインを出すのは骨を削ったり、取り除く時に難しいのですね。確かに言われてみれば大変そうです。
    VADの実質DT利用については、先日の読売新聞で記事が書かれていたので進んではいるのだろうなとは思っていましたが、既に治験は始っているのですね。

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